映画会社の方のトライスター

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七倉小春、2年間の歩み(中編)

 以前書いた記事から読んで頂けるとありがたいです。

emerihhi7758.hatenablog.com

 

お久しぶりです、えめりひです。

突然ですが丁度去年の今頃のアイカツスターズ!といえば44話『春の予感♪』が放送されていた頃です。44話と言えばまひロラのみつばちのキスだったりなんだったり色々あった回なんですが、ゆめちゃんとあこちゃんが作っている雪だるまをよく見てください。頭部に付けられた花飾りに眼鏡……春ちゃんだ!!!小春ちゃんがいるぞ!!!!!

などといった感じで小春ちゃんがイタリアに旅立った後も、その名残は残っていたのです。ゆめちゃんは元より、あこちゃんもアイカツアイランドでは小春ちゃんと組んでいたこともあり小春ちゃんに寄せる思いは人一倍深かったのでしょう。そんな二人が作り上げた小春だるまは何だか嬉しくて、同時にちょっぴり切なくなる。何とも言えぬ一品でした。今頃海の向こうで小春ちゃんはどんなアイカツをしているのだろうか。ゆめちゃん達は勿論、私たち視聴者も小春ちゃんの動向は全く分からず、寒い冬を耐え凌ぎやがて訪れるであろう春をただ待ちわびるばかりでした。

 

―そして、春が遂にやって来ました。遠い海の向こうからやってきたアイドル海賊と共に

というわけで今回は小春ちゃん帰国からレインボーベリーパルフェ誕生までを振り返ってみたいと思います。

 

七倉小春ちゃんが歩んできたアイカツ(ヴィーナスアーク編)

四ツ星学園を辞めて海を渡った小春ちゃんはエルザ・フォルテ率いるアイドル学校・ヴィーナスアークに入学し、新たなアイカツに励んでいる最中でした。そしてヴィーナスアークでのアイカツを通じて小春ちゃんは二つの大切なモノを手に入れることになります。

まず最初の一つはデザイナーとしてのスキルです。小春ちゃんがエルザに見込まれたのはアイドルとしての才能、だけではなく荒削りながら光るものがあるデザイナーとしての才覚でした。小春ちゃんとデザイン。あまり関連性は無いようにも見えますが、秘められし才能の片鱗は1年生の時に既に表れていました。時は大分遡り第7話、ジュエルアイスクリームのキャンペーンモデルオーディションに臨むローラの為に小春ちゃんが衣装デザインの手伝いをしていましたが、その時の仕事ぶりを見ているとローラのやけに抽象的で大雑把なアイデア(宇宙人・原始人・半獣人ってなんだよ!?)を即座に、且つ明確にデザインとして描き起こしています。あれだけ多種多様なジャンルのデザインを即座に生み出せるのは、まさに小春ちゃんが備えし才能の一つと呼べるでしょう。その類い稀なセンスをエルザは見逃しませんでした。入学から間もないのに、そもそも本格的にデザイナーの勉強を始めてから間もないのにも関わらずエルザは自身のブランド、パーフェクトクイーンのデザインを小春に手伝わせている事から、小春に対する期待と信頼が覗えます。

 

そしてもう一つは自信でした。ヴィーナスアークでのアイカツを通じてデザイナーとしての素質を高めた小春ちゃんは徐々に自分だけのアイカツ、自分が目指すべき目標を見出していきます。そんな小春ちゃんの心境の変化がはっきりと垣間見えるのが64話の一幕です。昨年に引き続き短冊に目標を書き綴るアイドル達。そんな中小春ちゃんが短冊に書き記したのは『プレミアムレアドレスをデザインしたい!』でした。1年生の時に短冊に書いていた『夜空先輩みたいになれますように』という曖昧でぼんやりとした願い事と比べると小春ちゃんが自らのデザインの実力に自信を持ち、自分らしいアイカツを確立しつつあることがわかります。

『新しい場所で新しい自分を探してきます』

別れ際のその言葉通り、小春ちゃんはヴィーナスアークで新しい自分を見つけることが出来ました。しかし一方でヴィーナスアークは生徒それぞれの個性や魅力を取り払いエルザの下で高水準のレベルまで底上げされる画一的な教育方針を取っているアイドル学校です。その是非は一先ず置いといて、ひょっとしたら小春ちゃんもヴィーナスアークでのアイカツを通じて従来から備わっていた強さや魅力を失っていたかもしれません。けれども小春ちゃんはアイドルとして、デザイナーとして急成長を遂げた一方で芯の部分は決して他の色に染まることなく本来の色を保ち続けていました。誰に対しても優しく、真摯に向き合うその姿勢。そして胸に秘め続けた想い。ヴィーナスアークでの厳しいアイカツを通じても小春ちゃんの持ち味が薄れることは決してありませんでした。だからこそ、そんな小春ちゃんをエルザは高く評価していたのでしょう。自分色に染め上げようとしてもなお滲み出る強い個性。エルザが求めるアイドルの真の個性を小春ちゃんは備えていたのです。だからこそエルザはそんな小春ちゃんの実力を認め、ひいては自分自身の野望の為に敢えて小春に卒業を言い渡します。当然これにはエルザに目論見があったのですが、この時点でエルザの真意・及び太陽のドレスの存在を把握しているのは騎咲レイのみなのでその辺りの概要の説明は省きます*1。こうして小春ちゃんは満を持して四ツ星学園への復帰を果たすことになり、ゆめちゃんと共に新たな目標に向かって歩み出す決意をします。しかし立派な成長を遂げた二人の間には埋めがたい溝が生まれていたのでした。

 

再会

 

「ゆめちゃんが好き。大好き、とっても好き、いっぱい好き。だから…私もこの足で一歩を踏み出して、夢を掴むよ、夢に近づくよ!」

 

最早説明不要、72話『二人の一番星』の小春ちゃんの台詞なんですが、このセリフに至るまでの流れを今一度振り返ってみたいと思います。

 

春ちゃんが海の向こうでアイカツをしている頃、ゆめちゃんは己に課せられた呪いを打ち破り念願の歌組S4となり、トップアイドルへの階段を順調に駆け上がっていきました。かつて共にアイカツをしてきたローラや真昼、あこも同様にアイドルとして成長を遂げて押しも押されぬ人気アイドルとなりました。

その一方で小春ちゃんもヴィーナスアークで成長を遂げたのは前述の通りです。しかし小春ちゃんは他の皆とは違い、その間表舞台で輝くことは殆どありませんでした。皆がS4になったりブランドを引き継いでアイカツランキングで上位に食い込んでいる一方で、小春ちゃんは自分の活躍と成長がハッキリと認識できるような機会に恵まれませんでした。だからこそ小春ちゃんは思い悩んだのでしょう。「果たして今の自分はゆめちゃんに相応しいのか」と。その感情が浮き彫りになったのが72話でした。

幼い時からずっと一緒で、共にアイドルに憧れ、共に四ツ星学園に入学し、共に夢を追いかけた。だからこそ小春ちゃんがゆめちゃんに抱く劣等感は計り知れない物だったのではないでしょうか。自分が何も成し遂げられない間にゆめちゃんはどんどん先に行ってしまう。もう私にとって手が届かない存在なのではないか。今のゆめちゃんはもう私が知っているゆめちゃんではないのではないか。私がゆめちゃんのために出来る事なんてもう何も無いのではないか。そう思い悩んでいたのかもしれません。けれども、これらは全て小春ちゃんの思い過ごしだったのです。小春ちゃんはアイドルとしてもデザイナーとしても立派な成長を遂げて、尚且つゆめちゃんにとって小春ちゃんは今なおとても大切な存在である。それが明白になるのがこの回でした。小春ちゃんはドラマの撮影現場においてヴィーナスアークで培ってきたデザインの知識をいかんなく発揮し、成功を収めました。例え自分では気づけなくとも小春ちゃんの中にあった小さな輝きは今や果てしなく大きな輝きとなり、皆に負けず劣らずの立派なアイドルに成長を遂げていたのです。

 

同様にゆめちゃんにとって小春ちゃんがとても大事な存在であることも明らかです。そもそも小春ちゃんがゆめちゃんに頼み込む以前に、ゆめちゃんが小春ちゃんにドレスのデザインを頼み込もうとする節もしばし見受けられます。ゆめちゃんはデザイン力の低さを常に気にしていましたし、59話では実際にドレスのデザインについて小春ちゃんからアドバイスを貰おうとしていました。そして何よりも72話は終始ゆめちゃんが小春ちゃんを気にかけている構図が克明に描かれています。小春ちゃんが中々切り出せない話を何度も問い質そうとするゆめちゃんの反応はまるで小春ちゃんの口からデザインの話題が出てくるのを期待しているようにも見えます。もしくは小春ちゃんが四ツ星を離れる時、中々タイミングが合わず小春ちゃんの口から留学の事を聞けたのが直前になってしまったことを未だに引き摺っていたのかもしれません。

…これはあくまで憶測に過ぎないのですが、ひょっとしたらゆめちゃんも小春ちゃんに対して若干引け目を感じてたのかもしれません。歌組のS4になったものの先代であるひめ先輩にはまだまだ遠く及ばず、星のツバサも中々手に入らず歌組幹部であるローラとリリィに先を越されている状況でした。そんなゆめちゃんにとって、新たな世界で立派な成長を遂げた幼馴染の姿はとても輝いて見えていたのかもしれません。

 

視点を小春ちゃんの方に戻します。お仕事を成功させたことにより小春ちゃんにも自信がつき、ひめ先輩の言葉もありゆめちゃんは自分が知っているゆめちゃんのままであることを再認識しました。それでもまだ胸の中には不安が残る。だからこそ最初に発した言葉が「ベリーパルフェのデザインをお手伝いしたい」ではなく「ゆめちゃんが好き」だったのではないでしょうか。この後に続く「私もこの足で一歩を踏み出して、夢(ゆめ)を掴むよ、夢(ゆめ)に近づくよ」という言葉が正に小春ちゃんの意志を更に際立たせています。

―今の自分がゆめちゃんの力になれるのかは分からない。それでも私はゆめちゃんが好き。ずっとゆめちゃんの傍に居たい。その気持ちは決して揺るがない。だから私は臆さず前に進む。

そんな小春ちゃんのあまりにも純真な気持ちがいっぱいに詰まった言葉のように私は思いました。そんな小春ちゃんに対しゆめちゃんが切り返した言葉が「全部私の言葉だよ!」というのが、ゆめちゃんも小春ちゃんを求めていたことを証明しているかのようでこれ以上ないセリフだと思いました。

 

あの悲劇的な別れから約10か月、思いがけない再会から約4か月。アイドルになる前から共に歩んできた道は一度違ってしまった。それでも二人は再び巡り合い並び立った。あの別れは決して無駄ではなかったことを証明して見せたのでした。

 

しかし二人がそれぞれの分野で成長した事が、結果として避けようのない衝突を招いてしまいます。

ようやく歩み始めた二人のドレス作り。しかしデザイナーとしての意見、アイドルとしての意見。互いに譲れない二つの意志がぶつかり合い喧嘩に発展。いきなり共同作業は暗礁に乗り上げてしまいます。小春ちゃんもゆめちゃんもそれぞれの道でそれぞれのアイカツを重ねてきました。そこで積み重ねてきたモノはどちらも全く異なるものであり、且つどちらも間違っていない正しい意見でした。一概にアイカツと言えども正解は一つでないことは明白です。互いが別々の道を歩んでしまったからこそ生まれてしまった剥離は、二人の距離が離れてしまったことを嫌でも思い起こしてしまう悲劇の様にも見えました。

しかしギクシャクした二人を見て、先輩であり舞組のS4であるゆずは物凄く笑顔でこう言いました。

「二人の空気がすっごく悪いぞ!」

突然何てことを言い出すんだあんたは。思わずそうツッコミそうになりました。ですがこれは決して悲劇などでは無いのです。お互いが一人のアイドルとして、デザイナーとして立派な成長を遂げたからこそ生まれた衝突であり、二人の成長あってのものです。だからこそゆずはポジティブに捉えたのでしょう。同時にこの二人ならきっとすぐに仲直り出来ると始めから確信していたとも受け取れます。

そして周囲の手助けもありようやく仲直り出来た二人。そんな時降り注いでいた雨は止み空には七色の虹―あの日から二人の中に立ちこめていた靄が遂に晴れた事を象徴するかのような素敵なシーンです。あの時ゆめちゃんが最後の飴玉の包み紙を開いたのも決して偶然では無いのでしょう。そしてその紙に刻まれていた最後のメッセージは

「いつかきっとゆめちゃんと一緒に夢をかなえたい!」

その夢を叶えるべく、遂に二人のブランド・レインボーベリーパルフェが誕生するのです。

 

七倉小春が見つけた自分だけのアイカツ!

ゆめと小春、二人で作り上げたレインボーエトワールコーデを身に纏い、遂にゆめは地球のツバサを手に入れることが出来ました。そして思わず壇上のゆめちゃんに駆け寄り抱き着き涙を流す小春ちゃん。基本この二人が抱き合うときはゆめちゃんから抱き着きに行くケースが殆どなのですがこの時ばかりは小春ちゃんから抱き着きに行く。というのも感慨深いです。そしてその壇上で小春ちゃんはファンに向かって力強く宣言しました。

「ゆめちゃんと、そしてレインボーベリーパルフェのドレスを着る皆さんを、もっともっと輝かせたい」

 

「これが私のアイカツです!!!」

 

春ちゃんが歩んできた道は決して平坦ではありませんでした。自分の輝きを見つけられず迷っていた彼女は勇気を振り絞って飛び込んだ世界で自分だけの光を見つけて、最も大事な親友と共に大輪の花を咲かせました……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや!!!!!ちょっとまてい!!!!!!!!!!!!!!!ホントにこれで良かったんかい!!!!!!!!!!!!!!!!!

確かに小春ちゃんは他の誰もが辿り着いたことのない自分だけのアイカツを見出しました。それは小春ちゃんの悲願でもあり喜ばしい事です。自分もとても嬉しかったです。けれどもこれはあくまで小春ちゃんのデザイナーとしての到達点であり、アイドルとして当初から抱いていた「S4になりたい」「ゆめちゃんと同じステージに立ちたい」という思いがおざなりになってしまったように感じました。素晴らしいエピソードだったにも関わらずこの違和感がどうしても自分の中に残り続けていました。

結局小春ちゃんの当初の夢はおざなりになってしまうのか。いや、ゆめちゃんはハッキリと「私の親友で、アイドルで、そしてデザイナーの七倉小春ちゃんです!」小春ちゃんを紹介しています。アイドルとしての小春ちゃんは何処へ行ってしまうのか。幸福と同時に更なる不安に見舞われましたのでした………

 

 

しかし、小春ちゃんの物語はこれで終わりでは無かったのです。これはまだ通過点に過ぎなかったのです。レインボーベリーパルフェの誕生は小春ちゃんの集大成であると同時に、小春ちゃんの新たなアイカツの門出でもあったのです。

次回は小春ちゃんが今度は一人のアイドルとして輝きを放つ星のツバサ編後編について触れていきたいと思います。

 

一緒に渡ろう!七色の虹を!

そして、その向こう側へ!

*1:仮にゆめちゃんが自ら手掛けたドレスで地球のツバサを出現させていたらひょっとしたらエルザはずっと小春ちゃんをヴィーナスアークに留めてたのかも…?